ビールの濃さは、どう決まるのか|醸造学のきほん #13

こんにちは。ゴールデンブルワリーの児玉です。

同じビールでも、軽くて飲み進めやすいものがあれば、ずっしり重くてゆっくり味わうものがあります。アルコール度数が3%台のものもあれば、10%近いものもあります。

この差は、どこで決まるのでしょうか。答えは仕込みの段階にあります。麦汁がどれだけ濃いかで、そのビールの「強さ」の上限が決まるのです。

今日は、麦芽の量と、濃さを表す「初期比重」の話をします。

麦芽はどれくらい使うのか

#04 のマッシングの回で、麦芽のデンプンが糖に変わるところを見ました。その糖を含んだ液が麦汁で、酵母はこの糖を食べてアルコールを作ります。糖が多いほど、アルコールになれる材料が増えるわけです。

では、1回の仕込みで麦芽はどれくらい使うのか。アメリカの資料には、ビール1バレル(約117リットル)を造るのに、平均で麦芽60ポンド(約27kg)が必要という見積もりがあります(出典:オレゴン州立大学)。これはあくまで平均の目安で、濃いビールと軽いビールでは、量が大きく変わります。

また、麦芽の中身のうち水に溶け出す成分を「エキス」と呼びます。ベース麦芽(#01 の回で出てきた、ビールの土台になる麦芽)のエキスは、乾燥重量あたり約80%と示されています(出典:Briess)。

ただし、これは分析室での理想の数字です。実際の仕込みでは、麦芽から取り出せたエキスの割合(エキス収得率)を求めて、原料の量を考える手がかりにします(出典:きた産業)。

初期比重とは

仕込みが終わって、酵母を入れる直前の麦汁の濃さを「初期比重」と呼びます。英語では Original Gravity、略して OG です。

酵母を入れる直前に測った比重(OG)は、そのビールが最終的にどれくらいのアルコールになりうるかの、よい目安になります(出典:Brewers Association(CraftBeer.com))。

比重とは、同じ体積の水と比べた重さの比率です。水を1.000として、糖が溶けた麦汁は重くなります。たとえば初期比重1.048の麦汁は、同じ体積の水より4.8%重い、ということです(出典:Craft Beer & Brewing Magazine)。

### 単位は3種類ある

濃さの表し方は、使う道具や国によって違います。ここで3つ覚えておくと、資料が読めるようになります。

  • 比重:1.048 のような表し方
  • ポイント:比重を1000倍の差で表した、ブルワーの略称。「(比重−1)×1000」で、比重1.045なら45ポイント(出典:MISCO)
  • °P(プラート度):麦汁100gあたりに溶けているエキスのグラム数に近い表し方。12°Pは「重さで12%のショ糖水と同じ密度」という意味です(出典:Craft Beer & Brewing Magazine)

ポイントを4で割ると、おおよその °P になります。45ポイントなら 11.25 くらいです(出典:MISCO)。比重の下2桁を4で割る、と覚えても同じです。1.048 なら 48÷4 で、糖度12%になります(出典:きた産業)。

比重ポイント°P(おおよそ)
1.0454511.25
1.0484812
1.0808020

(出典:MISCO、きた産業)

ここで大事なのは「概算」だということです。厳密な換算には換算表が使われます(出典:きた産業)。

どうやって測るのか

濃さを測る道具は、主に2つあります。

比重計(ハイドロメーター)は、液体に浮かべて、浮き方で比重を読む道具です。アルキメデスの原理を使っていて、液体が重いほど浮き上がります(出典:MISCO)。歴史をたどると、アレクサンドリアのヒュパティアが最初の比重計を発明したという記述もあります(出典:MISCO)。道具そのものは、とても古いのです。

使うときの注意が一つあります。比重計の目盛りは、決まった温度でしか正しくありません。ふつうは20℃が基準なので、温度が違うときは補正が必要です(出典:きた産業)。温度計と一緒に使う道具、と考えてください。

屈折計(リフラクトメーター)は、光が液体を通るときの曲がり方で、糖の濃さを読む道具です(出典:MISCO)。必要な液はほんの1〜2滴で、少量で済むぶん、温度合わせの時間も短く済みます(出典:MISCO、きた産業)。仕込み中に、麦汁をこまめに測るのに向いています。

ただし、屈折計には弱点があります。発酵が始まると、液の中に糖・水・アルコールの3つが混ざります。何が屈折を変えたのか区別がつかなくなり、発酵が始まってからは、屈折計は比重を直接は測れません(出典:MISCO)。仕込み直後に OG を測っておき、あとで計算するかたちで使います。

煮沸で、麦汁は少し濃くなる

仕込みの途中、麦汁の濃さは何度か測ります。煮沸で麦汁が濃縮されるので、煮沸後の麦汁は、煮沸前より10%前後濃くなるのがふつうです(出典:きた産業)。

そして酵母を入れる前の OG は、煮沸後の数値とほとんど変わりません(出典:同上)。この OG が、仕込みの最終結果であり、その後の発酵管理の基準になる数値です(出典:同上)。

うちでも、発酵中は毎日のように比重を測って記録し、下がり方を見て発酵の進み具合を確かめています。比重が下がらなくなったら、糖がほぼ使われた合図です(出典:MISCO)。一般には、見かけの糖度(外観エキス)が初期の糖度のおよそ4分の1になる頃が、発酵の終わりの目安とされています(出典:きた産業)。

濃いほど、強くなる

さて、ここまでの話を、アルコール度数につなげましょう。OG が高いということは、酵母が食べられる糖が多いということです。糖が多ければ、アルコールも増えます。

アメリカのクラフトビールの解説では、OG 1.080 のインペリアルスタウトは、1.032 の軽いビターよりも多くの糖を抱えているので、アルコールは約8.0〜12.0%、ビターは3.2〜3.8%になる、と紹介されています(出典:Brewers Association(CraftBeer.com))。

スタイルごとの目安を並べてみます。

ビアスタイル初期比重(OG)アルコール度数
アメリカンスタイル・ライトラガー1.024〜1.0403.5〜4.4%
ジャーマンスタイル・ピルスナー1.044〜1.0524.6〜5.3%
アメリカンスタイル・IPA1.060〜1.0706.3〜7.5%
ベルジャンスタイル・トリペル1.063〜1.0927.1〜10.1%

(出典:Brewers Association)

OG が上がるにつれて、アルコール度数も上がっていくのが見て取れます。ただし、OG だけでアルコールは決まりません。糖がどれだけ発酵されるかも効いてきます(出典:きた産業)。発酵で比重がどこまで下がったか、という差で見ます。

また、エキスの中身にも差があります。見かけの濃さが同じ麦汁でも、発酵する糖と発酵しにくい糖の割合が違えば、できるビールはまったく違うものになり得ます(出典:きた産業)。ここは次回以降の、麦芽の違いの話につながります。

まとめ

  • ビールの濃さは、仕込みで決まる。麦芽から取り出した糖の量が、麦汁の濃さになる
  • 酵母を入れる直前の濃さが「初期比重(OG)」。比重・ポイント・°P は、同じ濃さを違う単位で表したもの
  • 比重計は浮き方、屈折計は光の曲がり方で測る。屈折計は、発酵が始まると単独では比重を測れない
  • OG が高いほどアルコールの上限は上がる。軽いライトラガーから、IPA、トリペルへと上がっていく

次回は「ビアスタイルで、麦芽はどう違うのか」。スタイルごとの麦芽の選び方の話です。

このシリーズはYouTube「チェリーベル・ジャパン」でも、動画版を出しています。

この記事を書いているのは

福岡県福津市のクラフトビール醸造所 GOLDEN BREWERY(ゴールデンブルワリー)です。運営はチェリーベル・ジャパン株式会社。500Lの仕込み設備で、自社ブランドのビールを造りながら、他社さんのビール造りのお手伝いもしています。

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